もう先月の話になりますが、パリの13区にある現代アートギャラリー街であるルイーズ ヴェイス通り近辺の、ヴェルニサージュ巡りに出かけてきました。いわゆる私たちが「ルイーズ ヴェイスに行く。」と言えばこのへんのギャラリー巡りをするってことなんですが、これらのギャラリーはLouiseという名前のアソシエーションを作っていて、2ヶ月に一度くらいの割合で同名のフリーペーパーを発行したり、いつも同じ日にヴェルニサージュを開催したりしています。まあ、便利っちゃあ便利です。私は、この地区のギャラリーのプログラムが個人的にあまり好きでないのと、ここのギャラリー巡りをするといつも「現代アートがわからん。」と打ちのめされ、感動どころか髪の毛一本分も心を動かされることがないことが多いので、知らず知らずのうちに避けてしまっています。
そんなわけでいつも通りの微妙な滑り出しで始まったヴェルニサージュ巡りでしたが、結局終わってみるとふたつも「好きやワー!」と思える展覧会に出会うことができました。そんななかのひとつがGallerie Suzanne Trasieve/スザンヌ タラズィエヴ ギャラリーで2008年5月24日から7月26日まで開催されているGil Heitor Cortesaoの個展。
Gil Heitor Cortesaoは1967年生まれのポルガル人アーティスト。日本語でなら、ジル エイトル コルテサオとでも呼ぶのかな?
私は彼の存在を知らなかったのですが、バイオグラフィーを見てみると、今までは自国のポルトガルでの活躍が多かったようですが、ここ最近ヨーロッパの他の国で彼の作品を見る機会が増えてきているようです。例えば去年ルクサンブールのMUDAMで開催された、ポルトガル出身の若手現代アーティストを集めた展覧会でも、彼の作品が展示されていたようですね。
壁が朽ちてペンキがはがれ放り出された廃墟のように見える劇場や、もはや生活の空間ではなく展示室であるかのように見える住宅のサロンなどを題材として扱った絵画作品たち。作品を遠くから見ると、まるで写真のようですが、近づいてみるとそれがどうしてかわかります。油絵がプレキシガラスで覆われ、そのせいでつるつるした写真のように表面に光が反射しているのです。
描かれているインテリアや劇場の内装なども、良―く見ていくと、キャンバスのようなはっきりとは知覚できない妙な物体が空間を飛んでいたり、まるでクモの巣がはっているかのような白い線が画面を横切っていたり、巨大な会議場の中心に真っ青な面が描かれていたり、摩訶不思議というと言い過ぎですが、現実ではないんだという私たちを突き放すような妙な冷たさを描かれている対象から感じます。


私が撮った写真がいけてませんねー。でも一応載せときます。

彼の作品のように、いまではもう既に近代建築史やデザイン史の一ページになってしまった、なんだか少し時代遅れなんだけれども、やはりいつまでも美しい、20世紀の現代建築やその内装を題材とする絵画を最近よく見かけるように思います。例えばこの間記事にしたポール ウィンスタンレーは、題材の切り取り方や光の用い方は異なるけれど、作品の放つ冷たさのようなものは Gil Heitor Cortesao にも感じられることであるし、 Gil Heitor Cortesao と年代の全く違うデザインを選びながらも、Rosson Crowは「キッチュ」という言葉でしばしば括られるようなデザインの内装を、 Gil Heitor Cortesaoと同じようにキャンバスの中で踊らせて、若いのにすっかりスターになりました。また Gil Heitor Cortesaoが古びた建物の中を選ぶなら、Enoc Perezはその外側だけをメランコリックに描きます。Gil Heitor Cortesaoのほうが落ち着いた感はあるけれど、じっと作品の前に立って視線を絵の上にはわせていると、Jules de Balincourtのパレットに見るビビットな色や暴力的な構成を発見します。
しかしまあ、この作品たちは売れるでしょうねー。スザンヌ タラズィエヴ ギャラリーは元々画家を多く抱えているギャラリーで、顧客層も、たまに流行に流されて作品を買ったりもするけれど、きっちり自分たちに見合っているのは何かをわかっているフランスやヨーロッパ、はたまたアメリカのブルジョワジー階級のお金持ちで構成されているのでしょう。そういう顧客にとっては、はやり廃りのない最高の絵画作品たちだと思います。そのうえ今回の展覧会で展示されていた作品のサイズとしては、比較的大きいものあったけれど、どれも、どちらかというとそんなに広大ではないパリのアパルトモンのちょっと空いた壁にかけられる大きさ。そう、ちょうど居間の暖炉の上の空間にかけたくなるサイズ。くー!やりおる!スザンヌ タラズィエヴがどれほどの売り方をするのかよく知りませんが、これならすぐに全作品売れてもおかしくないと思います。それにしても彼女のお抱えアーティストは大きい作品も制作するけれど、上で書いたようなパリのブルジョワたちのアパルトモンにちょうどいい大きさの作品もよく展示してる。これはアーティストたちがただ単にそういうものも制作するんでしょうかね。スザンヌ タラズィエヴがそのへんのアドヴァイスもうまいこときっちりしてるんでしょうかねー。
ヴェルニサージュのややこしいときだったので、価格を聞かずに出てきてしまいましたが、まだまだびっくりするほどの値段はついてないはず。100万円以下で買える作品もたくさんあるはずです。(完全なる予想です。えらそうに言っちゃったりしてね。へへ。)ほしーなー。ま、どうせ買えへんから迷う必要も急ぐ必要もないんですけどね。
最後に一言。ここのギャラリーに来たときは遠慮なく地上階奥にある階段を降りて行ってください。地下はちょっと倉庫みたいになっている部分もありますが、結構広い展示室でもあって作品もいくつか展示されています。
では機会のあるかたは、是非どうぞ。
Suzanne Tarasieve Paris
171 rue du Chevaleret
75013 Paris
tel : +33 (0)1 45 86 02 02
fax : +33 (0)1 45 86 02 03
info@suzanne-tarasieve.com
火ー土 11時ー19時
クリックお願いいたしますー。
![]()
ギャラリー | trackback(1) | comment(5) |
ニューヨークでギャラリー巡りをしているときに、幸運にも開催中だったウィンスタンレーの個展。彼の作品と初めて出会ったのは、パリの私が働いているギャラリーで、まだ私がインターンシップ生だったころに、暇があれば倉庫に一人で籠り、作品たちを勝手に引っ張りだしては眺めていたときでした。ギャラリーの倉庫に眠っていた2点のウィンスタンレーを観たときには、「はーー、たまらん。なんて美しいんやろう、、、」とため息が出ました。それから彼の他の作品には実際には出会えずにいました。
それがなんと私がニューヨークにいる間に個展が行われているではないですか!これは行かねば、何を持ってしてでも行かねば、とMitchell-Innes & Nashの扉を押したのでした。
2008年4月18日から5月24日まで、Mitchell-Innes & Nashギャラリーのチェルシーのほうで開催。
ギャラリーの扉を開けた瞬間から、なんというかもうウィンスタンレーの作品の放つ空気感がふわーっと私を包みます。まるでそこにそよ風が吹いたような。
Paul Winstanley/ポール ウィンスタンレーとは、1954年生まれのイギリス人アーティスト。ニューヨークでの個展はなんとまあびっくりこれが10年以上ぶりらしいです。
アーティストのサイトである上のリンクをクリックすると、普通のおっちゃんが出てきます。思わず笑ってしまうし面白いんやけど、ちょっとがっかり。もっとミステリアスなサイトにしてほしーよなー。っていうか最初クリックしたとき、思わず同姓同名の違う人のサイトかと思ったくらい。私の中のイメージと違い過ぎ。
彼の作品は自身で撮影した写真をもとに描かれた絵画。パッと見は、まるでピントの少しぼけた写真のようなHyperrealismeの作品のように見えます。写真という媒体がニュートラルに私たちが見ている景色を切り離して残す、というものであるならば、それを手で描いた絵画にした場合、どのような表現が可能なのかを追求した作品です。そのぼんやりとした、なんとも言えない喪失感というか、メランコリーというか、静謐な雰囲気は、ホテルのロビーや会社の待合室などのインテリアのほか、風が吹き抜けていくような木々の風景などの主題にとけ込んでいきます。上の写真の作品でも明らかなように、フェルメールの影響を大きく受けてますね。
今回の個展で多く見受けられたシリーズは、どこかの駅に続いていきそうな通路と、室内から見たカーテン。
大きな作品の前に実際に立つと、自分自身がいま駅にむかってこの通路を歩いていてふと立ち止まり、街の雑踏のなかでたまに出会う静けさを見つけたような感覚になります。

カーテンの作品群ではこのカーテンの引かれている広間の中にたたずんでいるよう。
平面の絵画作品であるのに、インスタレーションの中に入り込んだような気分になります。
ポール ウィンスタンレーは同じ風景を幾度も用い、何枚もの作品にします。
その行為はまるで写真作品を何枚もプリントするようでありながらも、そこは絵画作品なので、一枚として同じ絵は存在しないのです。
やっぱ好きだわ。ウィンスタンレー。同じ頃にニューヨークに行ってた私のボスは、パリに帰ってきてから「かな、ウィンスタンレーの個展やってたのよ。見逃すなんてアホなことした。」とプレスリリースを持って私のデスクに来ました。「めっちゃ良かったですよー!」って言ったら「ええ!かな、見に行ってたの!!なんで言ってくれなかったのー!」とちょっと怒ってた。あちゃちゃ。
クリックお願いいたしますー。
![]()
ギャラリー | trackback(1) | comment(3) |
「パリ現代アートギャラリー攻略ブログ」で更新していたけど、こっちに書いてなかった分です。
よかったらどうぞ。
Propositions lumineuses 2
Patrick Guns 「My Last Meals」
ギャラリー | trackback(0) | comment(0) |
「パリ現代アートギャラリー攻略ブログ」更新しました。
もうあっちのブログやめちゃって、ここに全部書いちゃおうかと思ってる今日このごろ。
ま、こっちに統一しても内容は一緒ですけどね。
Elmgreen & Dragset 「Side Effects」
ギャラリー | trackback(0) | comment(0) |
最近新しいマッキントッシュを購入しましてすっかりブログが更新しやすくなったんですが、してませんね。今年の抱負に「ブログの更新」も掲げたら良かったんだけれども、ほかにも精神面で大切な抱負がたくさんありまして、ほったらかしです。それも「もっと社交的になる。」とか「他人に興味を持つ。」とか「ヒトに感じよくする。」とか。30手前の女性の抱負とは思えません。でも抱負として掲げたからには、がんばってるんですが、こういう精神面での抱負は心身ともにやたらと疲れます。いまのところ抱負は実行できてるのでよしとします。
「パリ現代アートギャラリー攻略ブログ」のほう、更新しました。
Galerie Zurcherの「15ans apres,,,」展
Liu Jianhua 「Unreal scene」
良かったら見てください。
気長におつきあいください。
ギャラリー | trackback(0) | comment(6) |

