フランスアート界底辺日記//パリの某現代美術ギャラリーでハタラクune petite japonaise(ちっちゃい日本人の女の子)が、ピラミッドの底辺から垣間見るフランスアート界。
2008/05/25 (Sun) Paul Winstanley/ポール ウィンスタンレー

ニューヨークでギャラリー巡りをしているときに、幸運にも開催中だったウィンスタンレーの個展。彼の作品と初めて出会ったのは、パリの私が働いているギャラリーで、まだ私がインターンシップ生だったころに、暇があれば倉庫に一人で籠り、作品たちを勝手に引っ張りだしては眺めていたときでした。ギャラリーの倉庫に眠っていた2点のウィンスタンレーを観たときには、「はーー、たまらん。なんて美しいんやろう、、、」とため息が出ました。それから彼の他の作品には実際には出会えずにいました。

それがなんと私がニューヨークにいる間に個展が行われているではないですか!これは行かねば、何を持ってしてでも行かねば、とMitchell-Innes & Nashの扉を押したのでした。

2008年4月18日から5月24日まで、Mitchell-Innes & Nashギャラリーのチェルシーのほうで開催。

ギャラリーの扉を開けた瞬間から、なんというかもうウィンスタンレーの作品の放つ空気感がふわーっと私を包みます。まるでそこにそよ風が吹いたような。
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Paul Winstanley/ポール ウィンスタンレーとは、1954年生まれのイギリス人アーティスト。ニューヨークでの個展はなんとまあびっくりこれが10年以上ぶりらしいです。
アーティストのサイトである上のリンクをクリックすると、普通のおっちゃんが出てきます。思わず笑ってしまうし面白いんやけど、ちょっとがっかり。もっとミステリアスなサイトにしてほしーよなー。っていうか最初クリックしたとき、思わず同姓同名の違う人のサイトかと思ったくらい。私の中のイメージと違い過ぎ。


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彼の作品は自身で撮影した写真をもとに描かれた絵画。パッと見は、まるでピントの少しぼけた写真のようなHyperrealismeの作品のように見えます。写真という媒体がニュートラルに私たちが見ている景色を切り離して残す、というものであるならば、それを手で描いた絵画にした場合、どのような表現が可能なのかを追求した作品です。そのぼんやりとした、なんとも言えない喪失感というか、メランコリーというか、静謐な雰囲気は、ホテルのロビーや会社の待合室などのインテリアのほか、風が吹き抜けていくような木々の風景などの主題にとけ込んでいきます。上の写真の作品でも明らかなように、フェルメールの影響を大きく受けてますね。


今回の個展で多く見受けられたシリーズは、どこかの駅に続いていきそうな通路と、室内から見たカーテン。
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大きな作品の前に実際に立つと、自分自身がいま駅にむかってこの通路を歩いていてふと立ち止まり、街の雑踏のなかでたまに出会う静けさを見つけたような感覚になります。


PW2.jpg PW1.jpg

カーテンの作品群ではこのカーテンの引かれている広間の中にたたずんでいるよう。
平面の絵画作品であるのに、インスタレーションの中に入り込んだような気分になります。

ポール ウィンスタンレーは同じ風景を幾度も用い、何枚もの作品にします。
その行為はまるで写真作品を何枚もプリントするようでありながらも、そこは絵画作品なので、一枚として同じ絵は存在しないのです。

やっぱ好きだわ。ウィンスタンレー。同じ頃にニューヨークに行ってた私のボスは、パリに帰ってきてから「かな、ウィンスタンレーの個展やってたのよ。見逃すなんてアホなことした。」とプレスリリースを持って私のデスクに来ました。「めっちゃ良かったですよー!」って言ったら「ええ!かな、見に行ってたの!!なんで言ってくれなかったのー!」とちょっと怒ってた。あちゃちゃ。




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2008/05/23 (Fri) Sigalit Landau @ MOMA

ニューヨークではコンテンポラリーアート三昧でございました。
そんなニューヨークレポート、第一弾はMOMAの小さな空間で2008年3月19日から6月28日まで開催されているSigalit Landau/シガリット ランダウの個展。Projects87と題されたところ。この87が一体どこから来るのか、ニューヨーク住人でない私には知る由もありません。87人目ってことかな?

彼女は1969年生まれのイスラエル人女性アーティスト。最近ではフランスでも作品を見る機会がたまーにあります。ちなみに私の働いてるギャラリーに彼女の作品もあるので、実はMOMAでこんな企画が行われているとは全く知らなかったのですが、「勉強勉強!」と思い、ゆっくり堪能させてもらいました。

このMOMAでの企画は彼女がこれまでに制作した三点のヴィデオ作品を元に構成されています。これらのヴィデオ作品は、くるくると円を描く動きを見せるCycle Spunと名付けられた三部作。

まず一点目は2000年に制作されたBarbed Hula。
この作品は、パリのメゾン ルージュでも展示されたことがあり、かなりの反響を呼びました。私のつつましいデジカメでヴィデオを撮ったんですが、ある日の夜にブログの動画としてアップして、朝起きたらもう既に削除されていました。コンテンポラリーアートとしては、世の中にもっと見るに耐えない作品なんていっぱい存在しますが、さすがにブログの動画としてインターネットに載せるにはハードすぎたんでしょうか。説明もなく削除されていたので、そのへんは私にもわかりません。

schulte07-08-05-20.jpg

この画像を見ていただければ予想できると思いますが、死海を背景に、裸のアーティストが、とげのある鉄線でできたフラフープで遊んでいるをしている様子が撮影されています。フラフープが彼女の腹部に触れるたびに、傷がつき血が流れ出ます。それがループで永遠に繰り返されます。
この作品は既に見たことがあったんですが、何度見ても、やはり感情を強く揺り動かされる作品です。

ここから映像が見れます。


二点目はこの展示室の壁一面に映し出される2005年のDead Seeという作品。
Dead See1 Dead See2 Dead See3
塩度が非常に高く地球上で最も水面の低い死海に浮かぶ500個ものすいかと、それに沿ってうかぶアーティスト。まずその色と構成の美しさに息を呑みます。アーティストの頭部近くには、いくつかの割れたすいかが、まるで血を流しているかのように、またその内臓を見せるかのように、真っ赤な内部を見せています。
ランドアートの代表作品である、ロバート スミッソンの「スパイラル ジェッティー」を思い起こさせる、スパイラルを描くすいか。
SPIRALJ-1.gif


画面左下からつながれたスイカが、なんの抵抗力もないかのように、ゆっくりと、でも確実に、裸のアーティストと傷ついたスイカたちをも伴って引っ張られ、最後には画面上には死海の美しい青色だけが残るのです。
こちらは映像を削除されずに残りました。
だんだん腕が痛くなって最後のほう画面がやけにぶれますが、どうぞ見てってくださーい。



三部作の最後の作品は2007年に制作されたDay Done。
Day Done1 Day Done2
写真では少しわかりにくいかなーと思うんですが、廃墟のような建物のひとつの窓から、日中は黒いペンキで、その窓の周りを円状に塗り、そして夜には白いペンキで同じ行為を繰り返すというもの。
説明によると、これはユダヤ教の風習で、新しく立てられた家に、破壊の記憶を残すため、わざとペンキを塗っていないところや完成していないところを残す、というものの逆に利用した作品です。


そしてそしてこれらの三点のビデオ作品が展示されている空間にもうひとつ、彼女の彫刻というのかな?インスタレーションというのかな?とても美しい作品群が素晴らしい詩的な空間を作り出していました。
それはBarbed Salt Lampsと題された、鉄条網を様々な模様に展開させ、死海に沈めたあと、砂漠の太陽の元にさらした作品たち。
これらは効果的なライティングの元、まるでシャンデリアのような様相を見せながらも、ヴィジターの目線の少し下に位置するように展示されていました。
Barbed Salt Lamps detail Lamps


彼女の作品って、今回見て思ったんですが、ハードな主題を取り扱っているのに、哀し気で詩的で、でもどこまでも美しいところが、私の大好きでいつ見ても感動させられるMona Hatoumの作品たちと同じ感情を呼び起こすなあっていうところです。まあMona Hatoumの作品たちはなんだかもっとおもしろおかしいところもありますがね。

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2008/05/21 (Wed) 2008年4月備忘録

今更4月の備忘録です。
アートフェアが増えると見に行くものが減るというのがまるわかりですね。
あと、ギャラリー巡りを友達とすると見る数が減るというのもまるわかりです。
ま、しゃべりすぎなだけなんやけど。
アートフェアを3つも見たわりには、記憶に残る作品がなかったのが残念です。

では興味のある方はどうぞ。

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2008/05/16 (Fri) Witte de With for SHIFT

久しぶりの更新。っていってもお知らせです。
3月前半に行ってきたロッテルダムにあるコンテンポラリーアートセンターWitte de Withの記事を、SHIFTに書きました。2ヶ月も待っていただいて、SHIFTには申し訳ないです。
っていうか、大した情報は得られませんのであしからず。

それでも読もうという方は、こちらからどうぞ。header_08-01.gif


ニューヨークから帰ってきて、ブルターニュに行ったりもしましたが、実はここ最近風邪なのかなんなのか、体調がめちゃくちゃ狂っていて、ブログに書きたいネタはいっぱいあるのに、実行に移す暇と気力がありません。明日のヴェルニサージュまではどたばた。そしてまた6月最初のバーゼルまでもどたばた。いつになったら終わるんでしょうか、、、。

前から見たかったLever Houseどどーん。
Lever House

多い多いとは知っていたけど、どこを撮っても星条旗が入ってくるのが気に入らない。ありえへん。

ニューヨークレポートいつになったらできるんでしょうかね。

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プロフィール

Author:kana
パリにある現代美術ギャラリーで下っ端としてハタラク。

京都生まれの京都育ち。2000年5月にフランスはリヨンに来て4年何ヶ月かほど過ごし、2004年9月から現在に至るまでパリに、猫のミントと一緒に生きています。

こんなものも書き始めました。
「パリ現代アートギャラリー攻略ブログ」
http://kana-sunayama.iza.ne.jp/blog/
こっちでも書いてます。
SHIFT
http://www.shift.jp.org/

2007年春に、フランス人の友人&ブラジル人の友人と共に、キュレーター団体をNPO法人としてパリで立ち上げました。
現在は、記念すべき一つ目の展覧会に向けて忙しくしています。
そんなわけでとにかく少しでも多くのアーティストさんたちとの交流を求めています。
「こんな面白いアーティストを知っているよ。」という人は立候補でも推薦でも、気軽にコンタクトください。
(と書いたら、早速たくさんのメールを頂くようになりました。ひとりひとりにお返事ができない状況です。返事がなくても落ち込まないでください、、、。)

やる気が出るのでクリックください。
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