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Orphee et Eurydice/オルフェオとエウリディーチェ  Pina Bausch/ピナ バウシュ
先週にパリのオペラ座、オペラ ガルニエで、ピナ バウシュの「オルフェオとエウリディーチェ」を見てきました。
私にとってはピナ バウシュのオペラ初体験。オペラも遠い昔に見に行った記憶があるけれど、何の演目やったのかも何も覚えてないくらい、オペラに関しては知識ゼロです。
でもピナ バウシュが創ったオペラは単なるオペラではなくて、「ダンス オペラ」いわゆる「踊るオペラ」。まあ踊らなくて普通の歌って演ずるだけの一般的なオペラだっったら、コレグラファーであるピナ バウシュが出てくる必要は一切ないわけですから、この「ダンス オペラ」という新しい分野にも納得がいきます。それに元々、ピナ バウシュのダンスもなんで有名になったかと言ったら、それまでの「ダンス」としてしか存在していなかったダンスに、「タンツ テアター」いわゆる「踊る演劇」という、演劇とダンスをフュージョンさせた新しいダンスを提案したことに始まります。とにかくダンスと他の舞台演劇を混ぜることが好きなヒトなわけです。

ダンスだったら鑑賞前に批評や紹介文を読むことを自分に禁じている私ですが、今回はオペラということで、まあ歌舞伎でちゃんと前もって話のあらすじを理解して舞台鑑賞に挑むのと同じですから、めちゃくちゃ勉強していきました。美術史学科時代にお世話になったギリシャ神話の本をあるだけひっぱり出してきて、オルフェオについて復習。

ではギリシャ神話のオルフェオとエウリディーチェのお話についてちょっと書きます。
オルフェオは、ギリシャ神話の大半の登場人物のように神ではなかったけれど、歌と音楽に長けてるおかげで、みんなからほぼ神様扱いされている人間。その結婚相手がニンフであるエウリディーチェ。結婚してすぐに、かわいそうなことにエウリディーチェは蛇にかまれて死んでしまいます。悲しくてしょうがないオルフェオは、死の世界からエウリディーチェを取り返そうと思いつきます。オルフェオの奏でる歌と音楽は美しすぎて、誰も「NO」とは言えません。そんなわけで地獄の番人もエウリディーチェを生の世界に戻すことを承諾します。しかし条件が一つ。死の世界から生の世界まで戻る道すがら、絶対に彼女のことを見てはいけないし、どうして彼女を見てはいけないのかを説明してもいけない。その条件を満たさなかった場合、エウリディーチェはすぐさま再び死の世界へ連れ戻されます。エウリディーチェを連れて生の世界へ進むオルフェオ。その間、エウリディーチェは、わざわざ死を覚悟してまでも自分を死の世界まで迎えにきてくれた愛する夫オルフェオが、自分のことを見ようともしなければ、口をとざしていることに絶望し、再び死のうとします。それを感じたオルフェオは最後の最後、もうすぐそこが生の世界やのに!というところで、彼女のほうへ振り返り、抱きしめてしまうのです。その抱きしめた瞬間には、もう彼女は再び、死の世界に生きる者となってしまっているのです。

ピナ バウシュの「オルフェオとエウリディーチェ」は、1975年にオペラ ダンスとして創作されましたが、長い間踊られずにいました。1991年にピナバウシュがこの作品をもう一度生き返らせようと、当時のダンサーと共に息を吹き込みます。その結果、1993年2月にはピナバウシュのカンパニーによって公演が行われ、そして2005年5月にはパリオペラバレエのレパートリー作品となりました。
ピナバウシュが18年という長い年月のあとにも関わらず、もう一度命を与えたこの作品。
歴史はこういう思いによってつくられていくんですね。ピナバウシュがこんな風に思わなかったら、たとえ思ったとしても忙しい中実行に移さなかったら、「この作品を残していきたい。」と強く思わなかったら、先週私がこの作品を見て感動することもなかったでしょう。歴史は歴史家がつくるものだけではなくて、当事者たちが意識的に残す歴史もあるんですね。

Christoph Willibald Gluckの音楽に合わせてドイツ語で歌うコーラスはオーケストラの後ろ側に立ち、舞台上には状況を表すダンサーの群衆と、オルフェオの歌い手と踊り手、エウリディーチェの歌い手と踊り手、そしてキューピッドの歌い手と踊り手が登場します。3人の主要登場人物は歌い手と踊り手の二人によって、光となり影となっては一人の人物を表すのです。


第一幕「喪」。
エウリディーチェの死の前に、嘆き悲しむオルフェオ。
Orphee1.jpg Orphee2.jpg

黒い衣装を着た群衆が手をサーっと上に伸ばすダンスが素晴らしく美しかった。
手を上にあげてるだけなのに、魔法にかかったように見とれてしまった。
Orphee4.jpg Orphee5.jpg

舞台設定は、かなり不思議な空間が出来上がっていて、なんだかガラス張りの空間や枯れた植物のようなものが見えたけど、それらの必要性があまり感じられませんでした。
ところどころにチョークで円や子供の頃にしたケンケンパのステップが踏める四角が描いてあり、最後に死の世界へエウリディーチェを迎えに行こうと決めたときに、キューピッドが道しるべをするのに、舞台上に斜めにチョークでサーーーーーーーッと線を引いて舞台からいなくなるのがとても効果的で印象に残りました。


第2幕「暴力」。
舞台右手に木の椅子が何段にも積み重ねられています。その椅子でできた天井まで届くかのような塔から、細い白い糸がつながれていて、その糸はこの地獄の住人につながれています。
住人であるダンサーが動くと、床にはった何本もの糸が曲線や直線を描いて、とてもきれいでした。
糸だけでこんなに美しい効果があるなんて!なんて経済的な!と感心し、その美しさにホケーとなりましたが、その美しい線を描く糸によって地獄につながれている住人の苦しさのギャップがまた良かったです。
Orphee3.jpg Orphee6.jpg

ここでの登場人物は、地獄につながれた住人たちと、地獄の番人3名。
地獄の番人3人は、なんだか黒いエプロンみたいな衣装を裸にまとっていて、私には最初から最後まで筋肉むきむき踊るストリッパー3人にしか見えませんでした。ダンスはとても良かったけど。それを一緒に行った配偶者に言うと、彼は彼で「最初から最後まで肉屋の兄ちゃん3人にしか見えへんかった。」と言ってました。みんなそれぞれ解釈が違いますね。


最も美しかったのは、第3幕「平和」。


天国の住人たちのダンスと揺れるスカート。気が遠くなるほど美しい。
最後にオルフェオが左手前から、エウリディーチェが右手奥から出てきます。オルフェオはエウリディーチェに背を向けて立っています。オルフェオの姿を発見したエウリディーチェはゆっくりゆっくり彼のほうに歩み寄り、その気配を感じたのか、オルフェオも彼女のほうへ背を向けたまま、二歩、三歩、と歩を進めます。その二人の間の空間。
今回の舞台で最も美しかったのは、ダンスでもなく、ダンサーでもなく、衣装でもなく、舞台装置でもなく、この二人の間の空間。ライトに照らされた何もない床。これを見て、私は泣きました。
その空間は最後に優しく触れられて、つながれた二人の手によって埋められます。


第4幕「死」。
Orphee7.jpg

何もない舞台の上で真っ赤のドレスを着たエウリディーチェ踊り手と、裸のオルフェオ踊り手、そしてそれぞれの歌い手が一人ずつ。と計4名しか舞台にいません。
死の世界から生の世界へ行く道。ふたりの葛藤。
絶対に頭をあげずに、眼をつむったまま踊るオルフェオ。自分を見てくれなくて絶望するエウリディーチェを感じ、苦悩に耐えるオルフェオ。どんなにふたりが美しく表情豊かに踊っているときよりも、再び死のうとするエウリディーチェを引き止めようとして彼女を見、抱きしめてしまったあとのオルフェオの背中が素晴らしかった。歌い手のエウリディーチェと踊り手のエウリディーチェが死を表す十字架の形に横たえられ、そのうえを覆いかぶさりながら、嘆き悲しむオルフェオの歌い手。その間、とても長い間、踊り手のオルフェオは舞台の左奥に観客に背中を向けて座り込んでいます。私たちが見えるのはその背中だけ。すごくすごく美しくて哀しい背中。身体を動かすことなしに、成立するダンス。素晴らしい。


かなり満足できた公演でした。
安い席を取ったのに、偶然にもとてもよい場所で見ることができました。満足満足。
しかし普段、コンテンポラリーダンスを見ている私としては、やはり全てのダンサーが美しくて同じような身体の持ち主で、っていうバレエカンパニーの踊るのには、ちょっと慣れないというか、抵抗がありました。
私がコンテンポラリーダンスが好きな理由は、ダンサーたちに、背の高い人もいれば背の低い人もいて、すこしボリュームのある人もいればガリガリの人もいて、白人もいれば黒人もアジア人もいて、みんながそれぞれの育った文化や環境を背負って舞台に立っているからです。そこには表現と技術が必要で、何センチ以上の背が必要なわけではきっとない。
その点ではいつもクラシックダンスを主に踊るバレエ団は結構苦手です。
同じバレエ団でも国籍のさまざまなダンサーで構成されていることで有名なリヨンバレエ団なんかは、とても楽しく見れます。
まあでも、今回のダンス オペラの場合は、群衆で踊る部分なんか、「やっぱりクラシックを踊るバレエ団ならではの美しさなのかな?これがピナバウシュのカンパニーではこの美しさは出ないかな?」と思いました。まあどちらも観てみないとどんなに考えても一生わからない疑問ですが、、。
もう一つのピナバウシュのダンス オペラ、「タウリスのイフィゲネイア」もいつか見てみたい。

いまならこのページから公演のヴィデオが見れますよ。


このオルフェオとエウリディーチェのお話。
女はほんとにうざい生き物やな。と思いました。
すぐに「なんで私のこと見てくれへんの?」「私のことほんまに好きなん?」「なんでしゃべってくれへんのー?」「もうそんなんやったら死ぬー!」なんて。
黙ってついてこんかい!
と公演中何度思ったことか。
昔の日本女性なら、例えば原節子なら、この話は悲劇にならず済んだはず。
そう思いません?
でも私もきっとエウリディーチェみたいにワーワー言ってしまうわ。でもせっかく生き返れるんなら、「なんでやろ?何ムッツリしたはんにゃろ。」と思いながらも最後まで付いて行くけどな。
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02/12 02:51 | コンテンポラリーダンス | CM:4 | TB:0
ロンドン在住のHOKUHOKUです。こちらの美大でコンテンポラリーアートを勉強していました。今週末念願のPina Bauschの”Cafe muller”と”The rite of spring”の2本立てを見に行きます。(ロンドンSadlers Wells)Paris ではこんな大掛かりな作品も見れるんですね。ロンドンにも公演に来ないかな?拝見する限りとっても豪華な作品のようですね。ダンスはもちろんのこと彼女の作る舞台の美術、衣装、コンセプトも感動ものです。Respect!! フランス語も大好きで、夏期休暇にはフランスで勉強したいと思っています。これからちょくちょく見させていただきますね。よろしく。PS関西出身ですか?私はそうです。
HOKUHOKUさん、はじめまして。
私はHOKUHOKUさんが見に行かれる演目を見たことがないのでなんとも言えませんが、Cafe Mullerってめちゃくちゃ有名なやつですよね。しっかり楽しんできてくださいね。
そうです。私は関西人です。京都です。京都人は普通「関西人?」って聞かれると、「いえ、京都人です。」って言うんですよ。でも私は京都弁よりも関西弁を話すので、やっぱり関西人かな。
かなさんこんにちは、
昨日偶然この作品のビデオの一部だけを見たんです。すごく素敵だった。しかもそこで踊っていたのが、ミテキクドーという日本の血が入った人で、(たぶんとても有名だと思うんだけど)、初めてその存在を知りました。ピナ バウシュのこともっと知りたくなりましたよ。
世の中にはほんとに素晴らしい芸術家がいるものですね!
sidoredoさん、こんにちは。こないだはどうもー。わざわざギャラリーまで来てくれてありがとう!またバルセロナに行く際は連絡しますね!
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