フランスアート界底辺日記//パリの某現代美術ギャラリーでハタラクune petite japonaise(ちっちゃい日本人の女の子)が、ピラミッドの底辺から垣間見るフランスアート界。
2008/02/13 (Wed) Robert Adams 「On the Edge」

もう一ヶ月も前の話ですが、書きます。

何ヶ月も遠ざかっていたカルティエ財団に久しぶりに行ってきました。
それというのも、行くつもりでいた新しい展覧会のオープニングに、11月の大型ストライキのため行けなかったからです。そんなわけで、どうしても見ておきたかったLee Bulの展覧会。
と書くと、まるで私が今から Lee Bulの展覧会について書くみたいに思われるかもしれませんが、違います!
カルティエ財団での展覧会はよく、同時期に二人のアーティストの個展が行われます。例えば地上階はゲリー ヒルで、地下階は束芋ってな感じで。2007年11月16日から2008年1月27日まで、地上階でリー ビュル、地下階でロバート アダムスの個展がそれぞれ開催されていました。

Lee Bul 狙いで行ったカルティエ財団でしたが、ロバート アダムスの作品たちの静かな強さにガツンとやられてしまって、行った後何日か、ロバート アダムスのことばっかり考えていました。

ロバート アダムスは1937年生まれのアメリカ人アーティスト。以前は10年ほど大学の英語教師をしていましたが、1967年から写真家として生活を始めます。
彼の主題は主に都市生活とアメリカ西部の風景。人間を被写体におさめることが非常に稀な作品作りを行っていますが、身体としての人間の欠如のかわりに、彼の撮る自然にはいつも人間の手による自然への介入がそこらじゅうに感じ取れます。

そんなロバート アダムスの展覧会。今回はフランスで初の個展であり、150点もの写真作品が展示されていました。これらの作品は1990年から2003年までに撮影された三つのシリーズ、West from the Columbia, Time Passes, Turning Backからアーティスト本人によって選ばれました。

選ばれたこれらの作品たちは、彼の住んでいる太平洋沿岸の家から見て、東と西に位置する風景から成り立っています。展示方法もカルティエ財団の地下の中心を彼の家の位置だとし、東側に森の風景写真、そして西側に太平洋の風景写真が並んでいました。

森林の写真は、森中を撮りつくしたのではないだろうか、と思うほど、その数と森林に与えられた傷の多さに周りを取り囲まれます。
Cartier-RobertAdams-03G.jpg Cartier-RobertAdams-04G.jpg  h_3_ill_995203_e005.jpg

人間の肌に与えられた傷のように、白黒の写真であるにも関わらず、まるでそこに真っ赤にべっとりと流れる血が見えるようで、死のポートレートのようでした。
森林の作品では、垂直方向に長く、気をつけなければ気づかないほどに、幅を他の作品たちよりも切り取ったものが何点か展示されていました。このフォーマットが素晴らしく効果的で、小さな作品であるのに、まるで森が自分の前に立ちはだかるような感覚になります。

太平洋の写真は全体的に波の高い荒れた海を撮影したものが多かったですが、そんな荒れた海の水平線の向こうから指す光がとても美しく暖かく、人間がどうあがいても手に届かないものの存在を感じるようでした。
Cartier-RobertAdams-01G.jpg Cartier-RobertAdams-02G.jpg a5e744e2-b9e5-11dc-b9c0-175108b314f4.jpg


痛々しい傷ついた森林の写真と、人間を拒絶し続けるような海の写真たち。どれもサイズとしては30cm四方以下の小さな写真たちですが、150点という大量の作品が私たち観客が歩を進めるともに目の前に現れ、これでもか、これでもか、というように私の上に覆いかぶさってくるようでした。それはまるで美術本を見ながらページをめくっていくような感覚。
この展示方法を少し非難するというか、「数が多すぎて、ゆっくり一点一点を見ることなく、ただサーっと歩いて観賞を終えてしまう。」という批評もいくつか目にしましたが、私はその全く逆でした。何度も何度も、ぐるぐるぐるぐるそれぞれの作品を見たいと思わせ、精神に迫ってくる展示方法だったと思います。
人間の開発のひどさ、特にこの森をこのようなやり方で伐採することが本当に私たち人間にとって必要なのかわからない状態で作品を見るので、やるせないような気持ちになりますが、もう一方で、自然の力強さ、そして何か希望のようなものも見える気がしました。

150点の写真作品の他に、別の展示場で、ロバート アダムスが1970年から展覧会と同じように重きを置いて出版し続けている40冊ほどの写真集たちが紹介されていました。それらは展覧会のカタログとしてではなく、写真集自体が既にひとつの芸術作品として成り立つ、という趣向のもと制作されています。
すべての本を手に取ってみることはできないのですが、美術品のように素晴らしく展示された本たちは、彼のアーティスト人生、そして彼の人生そのものを物語っているようで見とれてしまいます。
私は仕事柄か、微妙な様々な高さに置かれたテーブル状のガラスの展示ケースも、上から下から横から、「どうなってるんやろ?」と舐めるように見てしまいました。

今度の誕生日には、ロバート アダムスの写真集が欲しい!と思いました。
本当におすすめですよー!
とりあえずアマゾンで見つけたのはこのへん。なんて軽い気持ちで全部載せようとしたら、ものすごいいっぱいありましたー。そんな気起こすんじゃなかった、、、。まあ、もうやっちゃったので載せますけどね。そのうえ年代順にまでしたし、、、。私そんなに暇なんか?
   
上の三冊は今回の展覧会の作品も載ってますね。

  

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パリにある現代美術ギャラリーで下っ端としてハタラク。

京都生まれの京都育ち。2000年5月にフランスはリヨンに来て4年何ヶ月かほど過ごし、2004年9月から現在に至るまでパリに住んでます。

こんなものも書き始めました。
「パリ現代アートギャラリー攻略ブログ」
http://kana-sunayama.iza.ne.jp/blog/
こっちでも書いてます。
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