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デュシャンのporte-bouteilles/ボトルラック(瓶乾燥器)
マルセル デュシャンのレディメイドシリーズのひとつ、Porte-Bouteillesがギャラリーで売りに出してる!ということで、Taddaeus Ropacギャラリーまでえんやこらと行って参りました。

ちなみにこの日のギャラリー巡り、10軒ほど回りましたが、子連れではありません。ギャラリー巡りって数時間歩きっぱなしなので幼児には体力的にちょっと厳しい、各ギャラリー入り口の段やアクセスもシンプルではないのと、ギャラリー内の階段も狭めなのでベビーカーでまわりづらい、まずマレ地区って歩道がせまいので幼児やベビーカーで進みにくい、などなど、ギャラリー巡りといえばなんか子連れに最高の時間つぶしのように一瞬思いますが、実は全然オススメできません。子供がまだ生まれたて~3ヶ月くらいのときは、抱っこ紐でちょこまか行っていましたが。

さて本題。
マルセル デュシャンとは皆さんもご存知の通り、1887年生まれのフランス人アーティスト。
シュールレアリズムやダダイズムなど、20世紀はじめのフランスを代表するアーティストたちと交流していましたが、のちにニューヨークに渡り、当時のアメリカのアートシーンに多大な影響を与えます。
コンセプチュアルアートの第一人者、「コンテンポラリーアートってよくわからない」と言われる代名詞のようなお方ですね。

このPorte-Bouteilles、日本語ではボトルラック、ビン掛け、瓶乾燥器など呼ばれているようです。
フランス語でも、その名称は定まっていないようで、ポンピドゥーセンターではPorte-Bouteilles(ビン掛け)、他にはSéchoir à bouteilles(瓶乾燥器)や Hérisson(はりねずみ)などとも呼ばれることがあるようです。
この作品は、かの有名なレディメイドシリーズ(説明するのめんどくさいのでウィキペディア見てください)の中でも一番最初にできた作品だといわれています。この作品の誕生(といってもレディメイドなのでこの商品自体はずっと前から存在していたわけですが。そこがデュシャンの芸術概念のおもしろいとこですね。)によって、それまでデュシャンが「網膜的芸術」と呼んでいたものから、アートがぐぐぐっとコンセプチュアルなものになっていくわけです。

レディメイドの作品は、美術作品と言えど、その唯一無二な部分がありません。なぜなら、レディメイドで使用されるオブジェは、大量生産でできた文字通りの既製品の1つでしかないからです。あの超有名な便器を裏返してサインして「これ『泉』ってタイトルにした」というデュシャンの作品も「本物」はどこにいったかわかっていません。

このボトルラックも然り。
本作品の起源の跡は、1916年にニューヨークを訪れていたデュシャンがその妹でパリにいたスザンヌに送った手紙にあります。(ちなみにマルセル デュシャンは4人兄妹の3番目で、お兄ちゃん2人も妹も画家又は彫刻家なアーティスト兄妹です。お金持ちで前衛的なご家庭やったんでしょうねえ。)その手紙によると、
僕のアトリエに行って、ビン掛けをとってきてくれないか、遠隔操作でレディメイドを作ろうと思うんだ。ビン掛けの一番下の円の内側に、白銀色の油彩絵具をつかって、僕があとで説明するままに書き込んでほしい。そして、こうサインして欲しい。
マルセル デュシャン による
ただ、この遠隔操作のレディメイド計画は、スザンヌがちゃんとやらなかったので未遂に終わります。こういうとこがすごく好きなんです、私。すごく人間っぽい。私がスザンヌやっても「おにいちゃん何ゆうてんねん。そんなことやってるほど暇ちゃうわ!」と手紙につっこんで終わりです。
あー、アーティストさんとか、それこそ弟とかに頼まれる、「くだらなそうなこと」にちゃんと答えていけば歴史がかわるかもしれんな、反省します。これからやります。

で、ニューヨークに移住したデュシャン。ロバート ラウシェンバーグやジャスパー ジョーンズなんかとも交流があり、1959年にグループ展に参加する際、「あ、あのビン掛け出そう!」となります。そこでマブダチの写真家マン レイに「前にあげた1935―1936年バージョンのレディメイドのビン掛け送ってー」と連絡。そしたらマン レイさん、ビン掛けがどこにいったかわからん、と。すごい時代ですねー。もうこういうエピソードだけでキュンキュンします。で、デュシャンは「じゃあもういっかいBHVまで行って、同じの買ってきて、ニューヨークまで送ってー。」と。もうかるい!いろいろかるい!あほらしくなるほど軽くて好きすぎます。
そんなすったもんだがあって、やっと展覧会に展示がかなったこの作品、その場でラウシェンバーグにお買い上げされて、それからずっといままで、ラウシェンバーグのアートコレクション、彼の死後はラウシェンバーグ財団のコレクションに入っていました。

ラウシェンバーグ財団は、近々ロバート ラウシェンバーグのカタログ レゾネ(ある作家の全人生の全作品を載せた作品図鑑のこと)を作る企画があり、その調査研究費用の捻出のため、このデュシャンのPorte-bouteillesを売却することを決定したそうです。
しかし、せっかくのこの歴史的作品。近年のアートマーケットでは何兆円もの大金をつむプライベートコレクターがたくさんいるでしょう。しかし財団は、一般大衆や研究者がアクセスしやすいように、公的施設へ売りたい、と。さあさあ、どこが手に入れるんでしょうか!楽しみ~!

では展示のほうへ行ってみましょう。

1階と2階(フランスの地上階と1階)ではロバート ラウシェンバーグの80年代の作品が展示されています。
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一番上の階に行くと、あった、あった。Porte-bouteillesに関連する当時のアーカイブ資料がずらっと美術館での展示のようにならんでします。これだけでももう圧巻。

こちらはLa Boîte-en-Valise, 1964
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La Boîte Verte (La mariée mise à nue par ses célibataires), 1934
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そして通路の奥には、、、あ!あの影!は!
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そりゃあいるよね、警備員さん。なんか警備員さんっていうよりおしゃれな感じのお兄さんでした。
1つの作品だけを監視するという精神的に苛酷そうな任務を遂行中、1日中お疲れ様です。

はいきたー!作品よりもライティング方法に興味がそそられるような、テアトラルでドラマチックな展示。
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スザンヌに「ボトルラックでレディーメイドを作れ」と指示するマルセル デュシャンの手紙原稿の拡大されたものが壁にはってあります。フランス人らしい筆致で読みづらいですが、最後のほうに書いてあるのがわかりますね。
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警備員さんに「大丈夫、さわんないから」と、サインの部分も近づいてパチリ。
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巨匠ラウシェンバーグの展覧会がほぼイントロ、アーカイブ資料も本物だらけで見ごたえ十分、長い通路の向こうに見える影、ライティング、手紙原稿の拡大展示、そしておしゃれな警備員、となんか様々な部分で演出がすごい展示でした。
あー楽しかった!!

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